不動産の承継をどうしよう?

第5回目では、家族信託®を用いた認知症の対策として考えられる方法について、簡単に紹介しました。

認知症対策として、信託契約を用いた2つのケースについてお話をさせていただきました。

 

今回は、承継者対策についてお話をさせていただきます。

さて、なぜ承継者対策が必要だったでしょうか?

第2回目でお話をしました。覚えているでしょうか?

なかなか思い出せないですよね。簡単に復習していきたいと思います。

何の情報も聞いていない状態で、突然、賃貸している不動産を相続した場合を考えていきましょう!

賃貸している不動産の状況、管理方法、これまでの経緯、賃貸のノウハウ、毎月の賃料、管理会社、管理担当者など知らなければならないことが山積みであるにもかかわらず、わからないことだらけです。そもそも、契約書はどこになるのだろうか?なんてこともあるかもしれません。

 

このような状況になることを回避するためには、

・承継者を事前に決定し、教育しておく。

ことが必要でしたね。

 

何も対策を行っていなければ、大問題かもしれませんが、

いやいや、うちはすでに遺言で承継者を決定しているので、問題ありませんよ、という皆様もいらっしゃると思います。

本当に大丈夫であるか、もう一度検証してみてください。

 

それではまず、遺言と信託契約の違いについてお話をしていきます。

決して、遺言が悪いとは考えておりません。遺言でないと、指定できないことが存在することも確かです。つまり、遺言と信託契約を用途に応じて、使い分けるという考え方が必要であると考えます。

遺言と信託契約との大きな違いは、3つあります。

  • 遺言は、本人の死後に開示され、有効になるものである。
  • 遺言でなければ、遺留分の減殺方法の指定はできない。
  • 遺言は1代限りである。

(他にも違いはありますが、今回は大きく異なるところだけお話します。)

 

①遺言は、本人の死後に開示され、有効になるものである。

当たり前のことですが、皆様が忘れていることです。

(有効な遺言であることが前提です。)

残念ながら、本人が亡くならないとわかりません。本人が生前のうちは、本人の意思に従うとことになります。

承継する人が本人の生前に、承継するものについての情報を聞いていない状態であれば、遺言を書いてあったとしても、承継者対策にならないことをご理解いただけたでしょうか?

 

本人が承継者に遺言の内容を伝えておいた場合はどうでしょうか?

本人が承継者に対して、遺言の内容を伝えていたとしても、承継するものについての詳細な情報を聞いていない状態であれば、遺言を書いてあったとしても、承継者対策にはなりませんよね。重要なことは、遺言の内容を伝えるということではないということです。

 

つまり、本人から承継者に対して、賃貸している不動産の状況、管理方法、これまでの経緯、賃貸のノウハウ、毎月の賃料、管理会社、管理担当者などの情報やつながりを承継する必要があるということです。

 

②遺言でなければ、遺留分の減殺方法の指定はできない。

この点について、詳細は割愛します。

 

③遺言は1代限りである。

<ケース3>遺言で相続させる場合

Iさん:不動産を所有している。

Jさん:Iさんの配偶者。

Kさん:Iさん、Jさんの長男。結婚して、子供がいる。

Lさん:Iさん、Jさんの長女。嫁いでいる。

 

Iさんの遺言にこのように書かれていた場合はどうなるでしょうか?

Jさんに全ての財産を相続させる。Jさんに相続させた後で、Jさんが亡くなった時は、Kさんに全ての財産を相続させる。

(取り上げるケースにおいて、今回はご理解いただくことに主眼をおいて説明していきます。コラムでは触れませんが、その他のリスクと考えられる部分が出てくる場合があります。実際には、専門家にご相談することをオススメいたします。)

さて、どうなりますか?

Iさんの財産を全てJさんに相続させると書いてあるわけですから、Iさんの財産は、全てJさんの手に渡ります。ここは問題ありませんね。

Jさんに相続させた後で、Jさんが亡くなった場合、JさんがIさんから相続した財産がKさんの手に渡るかというと・・・

Jさんが決めることであり、Kさんの手には渡りません。

遺言は、1代限りですので、

「Jさんが亡くなった後は、Kさんに全ての財産を相続させる。」という部分は無効になります。

Jさんに相続された財産は、Jさんの財産になります。Jさんの意思で決めることができます。

もちろん、JさんがIさんの意思通りに、Kさんに相続させると遺言で示せば、Kさんの手に渡ることになります。JさんがKさんとLさんに半分ずつ、相続させると遺言に書いた場合には、当初のIさんの意思である

Iさん→Jさん→Kさん

という考えは果たせなくなります。

このケースは、極端なケースかもしれませんが、ありえないケースではないでしょう。

 

今回は、不動産の承継をどうするか?その際に、用いられる遺言と信託契約の違いについてお話をしました。遺言と信託契約の違いを理解し、用途に応じて、使い分けるという考え方が必要であると考えます。

 

次回は、家族信託®を用いた「承継者の対策」についてお話をしていきます。

 

第1回から第4回までのコラムはこちら↓

http://www.nichijuken.org/column-okada.html

 

(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。

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