第12回目では、すでに不動産が共有状態になっている場合における、家族信託®を用いた管理上の共有解消についてお話をさせていただきました。
今回は、”任される人”を法人にすることができるのか?お話をしていきます。
第12回のコラムにおいて、家族信託®を用いた管理上の共有解消をお話した時には、”任される人”として、aさんがいました。aさんに何かあった場合はどのようになるのかと考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
多くの場合、aさんに何かあった場合のことも考えておきます。aさん以外にbさんが存在すれば、aさんに何かあった場合には、bさんを”任される人”にすると決めておくことができます。
”任される人”であるaさんに何かある場合についても考えておかなければなりません。そのため、”任される人”であるaさんに何かある場合はどのようにするのかを決めていないことが、”任される人”を個人にする場合のデメリットになります。
- ”任される人”に何かあった場合、対応できない。
それでは、”任される人”を法人にすることはできないのでしょうか?
もし法人にすることができれば、”任される人”を複数人という状況を作ることができると考えられます。(法人内で揉めないことが前提です。)
法人の形態には、色々と存在します。
・合同会社
・株式会社
・一般社団法人
などが存在します。
(上記の3種類以外にも法人の形態は存在しますが、今回は割愛します。)
”任される人”を法人にする場合、一般社団法人にする場合が多いです。
<ケース7’>賃貸不動産が共有になっている場合-法人を用いたケース
(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」
「委託者」=Xさん、Yさん、Zさん
(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」=一般社団法人c
(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」
「受益者」=Xさん1/3、Yさん1/3、Zさん1/3
一般社団法人cの理事にXさん、Yさん、Zさん、aさんを選任しておけば、誰かが認知症になった場合や何かあった時でも1人が対応できれば、契約事項が凍結されることを防ぐことができます。”任される人”が個人の場合と比べると、誰か1人が対応できれば良いので、契約事項が凍結されるリスクを減らすことができます。
ただし、
・法人内の理事同士で揉めないこと
・理事が1人なっても、対応できるように定款を作成すること
が前提になります。
そのため、理事同士で揉める可能性がある場合には、安易に用いるべきではありません。理事の候補になる人たち全員と話し合いを行い、揉める可能性をなくしてから、理事を決め、一般社団法人を設立し、”任される人”を一般社団法人に設定することをオススメします。
なぜ、”任される人”を法人にする場合、一般社団法人にする場合が多いのでしょうか?一般社団法人には、理事は存在しますが、理事に法人の持分はありません。理事の所有という概念がありません。
一方で、合同会社や株式会社には、持分が存在します。
合同会社においては、社員が法人の持分を所有しています。
株式会社においては、取締役が法人の持分を所有している場合が多いでしょう。せっかく、”任される人”を複数人という状況を作り出したにも関わらず、議決権が凍結されてしまうと、法人自体の経営判断が凍結されることになりますので、ご注意ください。
一般社団法人と合同会社、株式会社の違いを理解した上で、あえて一般社団法人を選択しないという考え方もあります。
一般社団法人を選択せずに、合同会社、株式会社を選択した場合においても、
・法人内の社員や取締役同士で揉めないこと
・社員や取締役が1人なっても、対応できるように定款を作成すること
(株式の保有数や特別な株式を用いるなど)
を念頭に置かれることをオススメします。
今回は、”任される人”を法人にした場合についてお話をしていました。
法人にした場合でも、前提を抑えていないと意味がないことを理解いただけたと思います。
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。