家族信託®のよくある勘違い

第9回目では、家族信託®を用いた相続財産の分割対策についてお話しさせていただきました。

①相続税対策

②相続財産の分割対策

③納税資金対策

④認知症対策

⑤承継者対策

前回までのコラムにおいて、相続対策における②、④、⑤について、家族信託®を用いることができることをお話しさせていただきました。

 

今回は、家族信託®に関する、よくある勘違いである相続税の節税対策になるかどうかについてお話しさせていただきます。

本コラムでは、家族信託®で相続対策を行うことができますという趣旨でお話をしてきました。本コラムの読者の中には、家族信託®で相続対策できるわけだから、相続税を節税することができるのではないか?と考えられる読者もいらっしゃるかもしれません。

これが、家族信託®に関する、よくある勘違いです。

残念ながら、家族信託®では、相続税の節税対策にはなりません。

 

本コラムでは大まかに理解することを目的としておりますので、触れておりませんが、専門家の説明において、「信託財産は、相続財産から切り離して考える」と話しています。この説明は事実ですが、一般のみなさま方にとって、「信託財産は、相続財産から切り離して考える」と言われると、信託財産は相続財産ではないので、相続税がかからないのではないか?と誤解されるのではないでしょうか?

 

みなさんは、専門家になるわけではありませんので、大まかなことを理解できれば問題ありません。そして、亡くなった人から受益権を渡されると、どうなるのか?ということが理解できれば問題ないということです。

大まかにいうと、

財産の管理、運用、処分については、信託契約や信託法に従います。

税金については、税法に従います。

ですから、相続税は相続税法に従うことになります。

 

信託財産について、理解する前にまず、亡くなった人の相続財産の扱いにについて理解するべきでしょう。亡くなった人の相続財産がどのような扱いになるかご存知でしょうか?

亡くなった時点で亡くなった人の相続財産は凍結されます。詳細につきましては、割愛しますが、大まかにいうと、亡くなった人の相続財産の帰属先について、遺産分割協議書を提出することによって、はじめて凍結が解除され、帰属先の人が使うことができるようになります。

 

さて、実は凍結されないものがありますが、何だと思いますか?

それは、死亡保険金です。

被保険者が亡くなると、死亡保険金は保険金受取人に支払われることになります。保険の契約時に保険金受取人を設定するからです。(契約後、保険金受取人を変更することは可能です。)

死亡保険金は、相続財産ではありません。

 

それでは、相続財産ではない死亡保険金は相続税の対象にならないのか?というと、そのようなことはありません。

多くの方が死亡保険金には、相続税がかからないと勘違いしています。それは、死亡保険金には非課税枠というものが設定されているからです。死亡保険金の非課税枠はこのように設定されています。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

つまり、死亡保険金の非課税枠を超えると、課税対象になります。したがって、相続税がかからないわけではありません。多くの場合、死亡保険金を非課税枠に設定しているため、相続税の課税対象になっていないだけなのです。

 

信託財産も死亡保険金と同様な扱いとなり、みなし相続財産になると考えられます。信託契約時に”利益を得る人”の順番を決めるからであると考えられます。

ですから、残念ながら、家族信託®では、相続税の節税対策にはなりません。

相続税の節税対策は、別途講じる必要があります。

詳細な税金につきましては、税理士さんにお聞きください。

 

今回は、家族信託®に関する、よくある勘違いについてお話しさせていただきました。家族信託®では、相続税の節税対策にはならないということを理解していただけたと思います。

 

次回は、家族信託®に関する、よくある勘違い第2弾として、”任される人”の借り入れについてお話をさせていただきます。

 

第1回から第4回までのコラムはこちら↓

http://www.nichijuken.org/column-okada.html

 

参考:国税庁HP

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4114.htm

 

(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。

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