家族信託®を用いた認知症の対策とは?

第4回目では、家族信託®の基本と使い方について簡単に紹介しました。 信託契約後においては、「所有権」が2つに分離して、「名義」と「受益権」になる。また、信託には必ず3人の登場人物が存在する。

(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」

(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」

(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」

ということをお話ししてきました。

また、第2回目のコラムにおいて、認知症などにより判断能力が低下すると、契約を締結することができなくなることをお話ししました。

今回は、家族信託®を用いた認知症の対策として考えられる方法について、お話していきます。 取り上げる各ケースにおいて、今回はご理解いただくことに主眼をおいて説明していきます。コラムでは触れませんが、その他のリスクと考えられる部分が出てくる場合があります。家族信託®は、各家庭の事情を考慮した上で、信託契約を締結していくものです。実際には、専門家にご相談することをオススメいたします。 それでは、ケース別に考えていきましょう!

<ケース1>賃貸不動産を所有している人の認知症対策を行う!

Cさん:賃貸不動産を所有している。元気であるが90歳なので、少し物忘れをするようになってきた。認知症ではない。

Dさん:Cさんの配偶者。元気であるが88歳なので、少し物忘れをするようになってきた。認知症ではない。

Eさん:Cさんの子供。Cさんが物忘れをするようになってきたことを心配している。

背景:3年ほど前から不動産会社との話し合いには、Cさんだけでなく、子供であるEさんも同席している。Cさん、Dさんの生活費は、年金と不動産の賃貸収入で賄っている。

解決するべきであると考えられるリスク: この場合、Cさん、Dさんの生活費は、年金と不動産収入で賄っています。何も対策を行わずにCさんが認知症になってしまうと、

・Cさん、Dさんの生活費を下ろすことができなくなる。

・不動産は何もできなくなり、賃貸できなくなる。賃料収入を得られなくなる。

・賃料収入が得られなくなり、生活ができなくなる可能性がある。

ことが考えられます。

対応策: Cさん、Dさんともに認知症ではありませんので、信託契約を行うことが可能であると考えます。 一つの例として、

(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」=Cさん

(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」=Eさん

(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」=Cさん

Cさんが亡くなった場合には、Dさんに「受益権」が移るように設定しておきことも考えておきます。 (「受益権」が移る設定は、次回にお話ししていきます。)

ケース1は、賃貸不動産を所有する方にとっては、当てはまる方が多いケースと言えるでしょう!

<ケース2>不動産を所有している人の配偶者がすでに認知症!

Fさん:不動産を所有している。元気に不動産以外で自営業を営んでいる75歳。認知症ではない。

Gさん:Fさんの配偶者。すでに認知症になっており、判断能力が低下している。施設に入居している。

Hさん:Fさんの子供。会社に勤めているサラリーマンである。

背景:2年ほど前からGさんは認知症である。

解決するべきであると考えられるリスク: この場合、生活をしていくことは問題なさそうです。それでは、何がリスクとなり得るでしょうか?

ケース2では、Fさんの相続が生じた時のリスクが考えられます。

Fさんの配偶者であるGさんが認知症であることから、何も対策を行わずにFさんの相続が生じた時に

・成年後見人をつけて、法定相続する。

・成年後見人が合意してくれないと、不動産は何もできなくなる。

・何かを行うたびに裁判所の許可が必要になる可能性が高い。

このようなことが考えられます。

対応策: Fさん、Hさんともに認知症ではありませんので、信託契約を行うことが可能であると考えます。 一つの例として、

(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」=Fさん

(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」=Hさん

(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」=Fさん

Fさんが亡くなった場合には、Gさんに「受益権」が移るように設定しておきことも考えておきます。 (「受益権」が移る設定は、次回にお話ししていきます。)

ケース2においても、賃貸不動産を所有する方にとっては、珍しいケースとは言えないでしょう! ケース2では、Fさんの配偶者であるGさんが認知症のケースでしたが、子供が認知症であるケースも考えられます。その場合には、「名義」の人を誰にするべきであるか、きちんと考えていく必要があります。

今回は、代表的な2つのケースについてお話をさせていただきました。世の中で言われている相続対策では、所有権を持っている人の対策しか考えることはありません。しかし、認知症対策においては、所有権を持っている人の対策だけとは限りません。今回お話した代表的な2つのケースでは、所有権を持っている人の対策と所有権を持っていない人の対策について、お話をさせていただきました。 認知症対策といっても、今回お話させていただいたケース以外にも様々なケースが考えられます。家族信託®は、各家庭の事情を考慮した上で、信託契約を締結していくものであるということを認識していただけると考えております。

さて次回は、「承継者の対策」についてお話をしていきます。

第1回から第4回までのコラムはこちら↓ http://www.nichijuken.org/column-okada.html

(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。

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