家族信託に関する裁判の結果を知る

信託法は2006年12月に改正され、2007年9月から施行されました。5年ほど前から少しずつ家族信託というものが認識され、家族信託を行う人が増えてきたというのが現状です。信託法が改正されてから十数年、家族信託が認識されてから5年ほどです。日が浅いこともあり、家族信託において、裁判になった案件がありませんでしたので、判例はありませんでした。

 

この度、家族信託に関する裁判が行われ、判決が確定しました。今後の家族信託における裁判が生じた時には、判例として参考にされることになると思います。

さて、裁判の結果はどうだったのでしょうか?

まず、状況を整理すると、

信託契約書を締結する際に、公証人の前で信託契約書の内容を確認したことによって、信託契約書を公正証書として作成しました。

信託契約書の内容として、委託者兼受益者と受託者が合意した時に信託契約を解除することができるという条文にしていたようです。

 

裁判としては、

委託者兼受益者Aさんが信託契約を解除したいと考えたけれど、委託者兼受益者Aさんと受託者Bさんが合意した時に信託契約を解除する条文になっていることによって、信託契約を解除することができるのか?

信託契約を締結するときに、受託者Bさんが委託者兼受益者Aさんに対して、詐欺的な行為を行った、もしくは委託者兼受益者Aさんの錯誤があったために、信託契約が無効であると主張したそうです。

 

結果は、信託契約は有効であると認められました。

信託契約書を公正証書で作成していたことにより、公証人が委託者兼受益者Aさんに信託契約書の内容を確認し、委託者兼受益者Aさんが承諾していることを公証人が確認しているからのようです。

委託者兼受益者Aさんが承諾しているため、

受託者Bさんが委託者兼受益者Aさんに対して、詐欺的な行為を行った

委託者兼受益者Aさんの錯誤である

ということは認められないという判断だそうです。

理屈面だけを確認すると、判決を納得することができるものになっていると思います。

 

理屈面だけではなく、感情面の問題が存在します。理屈面だけであれば、裁判になっていないでしょう。この裁判における感情面を確認すると、納得しがたい判決と言いたい人はいるかもしれません。

Bさんは、簡単にいうと、問題があるような人だそうです。Aさんの財産を独り占めしようと考えて、家族信託という方法を考えたそうです。

Aさんを委託者兼受益者として、Bさんが受託者になる信託契約書を作成することを考えたわけです。

しかし、なぜAさんは、Bさんが問題がある人であるとわかっていながら、Bさんを受託者にする信託契約を締結したのでしょうか?

大いなる疑問です。

Aさんは家族信託がどういうものであるかを理解していなかったということが問題なのでしょうか?

もっと根本的なところに問題があると思います。

受託者を依頼することに関わらず、問題がある人に物事を依頼するとどうなるか?ということは理解できたのではないかと思いました。

完璧な人間はいません。誰でも過ちを犯すことがあるかもしれません。今度はBさんをAさんが信用しようと思ったのかもしれません。

感情面では、AさんとBさんが仲違いすることになりましたので、残念な結果であると言えるかもしれません。

 

判決から信託契約は有効であると確定しましたが、感情面でいざこざが残った状態です。受託者Bさんが面倒になって、委託者兼受益者Aさんと合意して、信託契約を解除するのであれば、裁判をやらなくても良かったでしょう。少なくとも、受託者Bさんは信託契約を続けたいと思ったわけです。今後受託者Bさんはどのように信託契約の内容を遂行していくのでしょうか?

 

さて、家族信託の裁判としては、結果が出ましたので、これが判例となるのでしょう。

一方で、受託者を依頼することに関わらず、物事を依頼する場合には、依頼する人を慎重に選択することが必要であるということです。家族信託という手法が悪いのではなく、使う人間に問題があったという結果であると考えます。

さらに、私のような専門家においては、Bさんのような人を受託者にするような家族信託を組ませないように注意する必要があるということであると考えます。

 

 

認知症大家対策アドバイザー

岡田文徳

 

参考:

金融法務事情2122号

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