第11回目では、”任される人”の借り入れについて、安易に”任される人”が借り入れをできると考えない方が良いというお話をさせていただきました。
今回は、家族信託®の使い方を用いた認知症対策の応用の仕方をお話ししていきます。
相続の際に、相続財産を分割することが難しかった人も多いのではないでしょうか?相続財産を分割することが難しい。とりあえず、不動産の持分を分割すれば、大丈夫だ。
このように考えられた方はいらっしゃいませんか?
不動産を共有持分にしてしまうと、後々にリスクを残すことになりかねません。もし、不動産を共有持分にすることを考えているのであれば、避けた方が良いでしょう。
相続の際にすでに不動産を共有持分にしてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?
あるケースを取り上げてみましょう。
(取り上げるケースにおいて、今回はご理解いただくことに主眼をおいて説明していきます。コラムでは触れませんが、その他のリスクと考えられる部分が出てくる場合があります。実際には、専門家にご相談することをオススメいたします。)
<ケース7>賃貸不動産が共有になっている場合
Wさん:賃貸不動産aを所有していた。
Xさん:Wさんの不動産を相続した。賃貸不動産の持分は1/3。Yさん、Zさんと共有である。
Yさん:Wさんの不動産を相続した。賃貸不動産の持分は1/3。Xさん、Zさんと共有である。
Zさん:Wさんの不動産を相続した。賃貸不動産の持分は1/3。Xさん、Yさんと共有である。
aさん:Wさんの孫。Xさんの長男。
ケース7では、相続財産を分割した時点では、多くの場合問題がありませんが、どのようなリスクがあるでしょうか?
第2回のコラムでお話したように認知症になった場合、不動産は何もできなくなります。
ケース7の場合には、Xさん、Yさん、Zさんの誰か一人でも認知症になった場合には、不動産は、契約事項がすべて凍結されます。
したがって、
・売却できない。
・賃貸もできない。
賃貸不動産の持分は1/3であっても、100%凍結されるということですから、リスクが3倍になるという考え方ができます。もちろん、3人とも認知症にならなければ問題ありませんが、認知症になるかならないかは誰にもわかりません。
まず、家族信託®を用いずに、リスクを減らす方法として、3人ともに認知症になる前に、
- 賃貸不動産の持分をXさん、Yさん、Zさんの誰か一人にする。
- 賃貸不動産を売却する。
- 賃貸不動産の持分をXさん、Yさん、Zさんの誰か一人にする。
賃貸不動産の所有権を1/3ずつ所有しているので、賃貸不動産aの所有権を100%にするには、所有権を2/3を買い取ることが考えられますが、不動産は高額になりますので、所有権を買い取ることはなかなか難しいでしょう。
②賃貸不動産を売却する。
3人ともに賃貸不動産を売却する意思があり、買主さえいれば成立します。リスクを減らす方法の一つとして、あげられるでしょう。
それでは、家族信託®を用いると、どのようなことができるでしょうか?
③家族信託®を用いて、管理者を一本化する。
(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」
「委託者」=Xさん、Yさん、Zさん
(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」=aさん
(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」
「受益者」=Xさん1/3、Yさん1/3、Zさん1/3
このように信託契約を設定します。
Xさん、Yさん、Zさんの受益権の共有状況を解消することはできませんが、家族信託®を用いることで、管理上の共有状態を解消することができ、Xさん、Yさん、Zさんの誰か一人が認知症になったとしても、aさんが賃貸不動産の管理を行うため、管理に支障が出る可能性が低くなります。
今回は、すでに不動産が共有状態になっている場合における、家族信託®を用いた管理上の共有解消についてお話をさせていただきました。
次回は、”任される人”を法人にしたいという方もいらっしゃるかもしれません。果たして、可能であるのかお話をしていきます。
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。