第10回目では、家族信託®に関する、よくある勘違いについてお話しさせていただきました。家族信託®では、相続税の節税対策にはならないということを理解していただけたと思います。
今回は、家族信託®に関する、よくある勘違い第2弾として、”任される人”の借り入れにについてお話をさせていただきます。
相続税の節税対策を行う時に、不動産を購入することはよく検討されることです。不動産は高額ですから、金融機関から借入れすることによって、不動産を購入することになる場合が非常に多いです。
それでは、家族信託®を行い、信託契約において、「名義」を”任される人”にして、財産の管理を行ってもらっている場合に”任される人”は借り入れをすることができるでしょうか?
安易に”任される人”が借り入れをできると考えない方が良いでしょう。
”任される人”が借り入れする、専門家の間では、「受託者借り入れ」と言います。専門家や金融機関の方々から「受託者借り入れ」を簡単にできると言われたら、きちんとリスクについて話をされるかどうか確認してください。リスクについて話をされない場合やリスクを受け入れることができない場合には、「受託者借り入れ」を行うことをオススメすることはできません。
したがって、リスクについて、納得された上で、「受託者借り入れ」を行う必要があります。
「受託者借り入れ」を行うことにおけるリスクとは何でしょうか?
相続税の節税対策を行う時に、金融機関から借入れすることによって、不動産を購入することを検討します。
一番重要なことは、「受託者借り入れ」が”財産をお願いする人”の借り入れとして、認められるかどうかです。
あるケースを取り上げてみましょう。
(取り上げるケースにおいて、今回はご理解いただくことに主眼をおいて説明していきます。コラムでは触れませんが、その他のリスクと考えられる部分が出てくる場合があります。実際には、専門家にご相談することをオススメいたします。)
<ケース6>受託者借り入れとは
Uさん:預金、不動産などの資産を持っている。
Vさん:Uさんの長男。Uさんの相続税の節税対策を考えている。
(1)「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」=Uさん
(2)「名義」の人=”任される人”=「受託者」=Vさん
(3)「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」=Uさん
Uさんの相続税の節税対策を行うために、Vさんが”任される人”としての借り入れが「受託者借り入れ」として認められるかどうかです。つまり、Uさんの債務として認められるかどうかです。
もし、この借り入れをVさんが借り入れたものとして扱われてしまったら、どうなるでしょうか?Uさんの債務として認められないので、この債務がUさんの相続財産として認められないことになります。したがって、相続税の節税対策にはならないことになります。
この点に関しまして、
・「受託者借り入れ」として認められる方法
・「受託者借り入れ」として認められない場合
については、現時点でははっきりしておりません。おそらく、まだ事例が出ていないでしょう。事例が出ていたとしても、最高裁の判例が出るまでははっきりしません。
そのため、専門家や金融機関の方々が「受託者借り入れ」について、きちんとリスクの話をされるかどうか確認してください。リスクについて話をされない場合や”財産をお願いする人”や”任される人”がリスクを受け入れることができない場合には、「受託者借り入れ」を行うことをオススメすることはできません。
今回は、”任される人”の借り入れにについてお話をさせていただきました。
安易に”任される人”が借り入れをできると考えない方が良いでしょう。
次回は、家族信託®の使い方を用いた認知症対策の応用の仕方をお話ししていきます。
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。