証券口座はどうするか?

まだまだかもしれませんが、家族信託が広まってきたことは周知のことと思います。家族信託が広まるにつれて、銀行等の金融機関で開設できる信託口口座が増えてきました。残念ながら、なんちゃって信託口口座の場合もありますので、きちんと確認する必要があります。それでも日本に存在する銀行等の金融機関の多くは、まだ信託口口座を開設することができない状態であることは、覚えておくべきことだと思います。今後さらに信託口口座を開設できる銀行等が増えることを祈っております。

 

さて、証券会社における口座では、信託口口座を開設することはできないのでしょうか?

2019年12月時点において、ほとんどの証券会社において、信託口口座を開設することができない状態です。家族信託に対して、銀行よりも対応することができていない状態と言えるかもしれません。

 

なぜ、証券会社は、家族信託に対して、対応が遅れているのでしょうか?

状況を整理してみると、単純な理由であると考えられます。

銀行と証券会社は、まったく異なる存在です。そして、何よりも預金と証券という扱うものがまったく異なっています。

預金が使えなくなってしまうと、大いに支障が出るでしょう。生活費、介護費用を出すことはできなくなります。大家さんであれば、原状回復の費用、設備の修繕等を出すことができなくなります。場合によっては、死活問題です。そのため、預金は信託口口座に入れておくべきであるという考えに至っても、当然のことと思います。

 

一方で、証券の場合はどうでしょうか?

すぐに支障が出るということは少ないと考えられます。金銭が不足しているのであれば、証券ではなくて、金銭に変えておくでしょう。証券で保有しているということは、当分の間は、金銭にする必要がないお金を証券に変えて運用しているということです。したがって、すぐに金銭に変える必要がないので、放置されていることが多いのではないかと考えられます。

 

しかし、認知症になってしまえば、当然のことながら、証券の売買を行うこともできなくなります。認知症対策として、家族信託を用いるのであれば、次のことを考えておいたほうが良いでしょう。

・証券を金銭に変えて、銀行等の信託口口座に入れておく

・証券会社に信託口口座を開設する

 

証券を金銭に変えて、銀行等の信託口口座に入れておくのであれば、証券は無くなるわけですから、銀行等の信託口口座において、対応すれば問題ないと考えられます。

 

一方で、証券会社に信託口口座を開設するという場合が問題となります。信託口口座を開設することができる証券会社の数が極めて少ないからです。

今まで銀行等の信託口口座と比較して、証券会社に信託口口座の需要が少なかったことがあげられます。ただ、信託口口座を開設する証券会社はあります。知りたいという方には、お教えすることが可能ですが、正直な話として、担当者とのつながりがないと対応してくれない可能性が高いです。証券会社のメイン部門ではないために、対応できる人が少ないことがあげられます。

 

さて、証券会社に信託口口座を開設するということになった場合に、気をつけるべきことを5つお伝えします。

1.現物取引のみによる対応になる

2.一般口座による対応になる

3.受託者のみによる対応になる

4.一代限りの信託契約書の内容である

5.遺留分に抵触するような信託契約は不可である

 

1.現物取引のみによる対応になる

現物取引のみによる対応になることは当然のことと考えます。信用取引は、本人の意思で行うものであり、本人から承諾を得ていたとしても、大きく損失する可能性がある信用取引は、家族信託で行うべきではないと考えます。証券会社の考え方に賛同できるところです。

 

2.一般口座による対応になる

一般口座での対応になるところはなんとも言いがたいところです。特定口座でも対応できるのではないかと思うところです。委託者兼受益者の確定申告を行うことを考えれば、一般口座のほうが良いのかもしれません。

 

3.受託者のみによる対応になる

受託者のみが証券会社に対して、売買の注文を行うことができます。委託者兼受益者が受託者に任せたわけであるから、受託者が行うべきであるという考えに基づいているようです。ここで、委託者兼受益者からでも注文することができるようにしてしまうと、受託者が把握していないことが生じることになるため、状況が煩雑になるからであると考えられます。

 

4.一代限りの信託契約書の内容である

証券会社によって、状況が異なります。一代限りの信託契約書の内容であることを条件としている証券会社もあれば、そうではない証券会社もあります。特に、受益者連続型の信託契約書を作成することを考えている場合には、必ず証券会社に確認しましょう!

 

5.遺留分に抵触するような信託契約は不可である

証券会社としては、相続争いに巻き込まれたくないからです。

 

最後に、証券を信託する目的を明確にしましょう!

なぜ、受託者に証券を任せるのか?

受託者に運用してもらいたいのか?

委託者、受託者、家族間で必ず話し合いを行い、納得し、方向性を定めてから、証券の信託口口座を開設してもらいたいと考えております。

 

認知症大家対策アドバイザー

岡田文徳

第1回から第4回までのコラムはこちら↓

http://www.nichijuken.org/column-okada.html

(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。

第25回コラム

https://dimetel.jp/2019/11/20/ft25/ ‎

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