所有者不明の土地はなぜ存在するのだろうか?
所有者不明の土地が増加していることはご存知のことと思います。以前、サブリース問題解決センターで書いたコラムがなくなってしまいましたので、こちらのコラムで再度、情報を発信しようと思います。
現在は任意となっている相続登記の義務化や、土地所有権の放棄の可否などを協議し、具体策を検討する。
なぜ具体策を検討しなければならないのか?とお思いの方も大勢いらっしゃると思います。そのためには、現状を知ることが必要です。
相続の登記を行なっていなければ、土地の所有者が誰であるかわかりません。なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか?
これは私の推測にすぎませんが、戦前は相続の登記が必要なかったのではないでしょうか?相続の登記自体は、存在していたはずです。しかし、戦前は家督相続です。相続する人は、多くの場合、長男と決まっていたので、家の人たちも近隣の人たちも誰が相続したのか明らかであったと考えられます。
また、近隣の人たちと間で土地境界線について、暗黙の了解でなんとかなってきたので、相続の登記をするまでもなかったのではないでしょうか?
一方で、戦後、民法では均等相続になりました。長男は地元に残り、その他の兄弟の多くが地元を離れ、都会で仕事をするようになった家が多いのではないでしょうか?そのような状態で相続が生じ、引き継がれます。引き継いだ1世代目は、兄弟姉妹なので、少なからず交流があると考えられます。しかし、2世代後に引き継がれると、家族間の交流も少なくなり、もう誰が相続したのかわからなくなっていても不思議ではありません。
調べてみたら、相続登記が行われていなかったために、土地所有者の相続人が200人になっていたという話も聞いたことがあります。
さて、ここで日本における所有者不明の土地は、どれくらいあると思いますか?
3つの選択肢から選んでください。
- 千代田区の面積
- 香川県の面積
- 九州の面積
答えは、③九州の面積です。
実際には、九州の面積よりも広いと言われています。みなさん、思っていたよりも広大な土地が所有者不明になっていると感じたのではないでしょうか?
ここで、私は一つ疑問に思っていたことがあります。
確かに、相続登記は義務ではないので、行う必要はありません。
でも、土地には、固定資産税がかかるはずなので、固定資産税を支払っている人がいるはずだから、所有者不明の土地はありえないのではないだろうか?と思っていました。
これは私の推測でしかありませんので、ご了承ください。
固定資産税には、免税点というものが存在しています。免税点未満であれば、固定資産税を課税されることはありません。
その免税点は、
土地:30万円未満
建物:20万円未満
になります。
土地の固定資産税を支払っている人にしてみたら、固定資産税を支払うのは当たり前です。
しかし、土地の固定資産税を免税されている人にしてみたら、固定資産税を支払うことは当たり前ではありません。土地に固定資産税がかかることすらも知らないかもしれません。
相続登記が行われず、固定資産税の免税となっている土地であれば、所有者不明の土地になる可能性があるわけです。
今後、さらに所有者不明の土地が増加することが考えられるため、政府もなんとかしなければと考えたわけです。
そのため、平成30年年度税制改正大綱に
「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」というものが盛りこまれました。
ご興味ございましたら、確認してみてください。
さらに、所有者不明の土地が増加することによって、市街地の再開発や防災面に支障が出ているという大きな問題があります。不動産は、所有権があります。権力の乱用になりますので、日本国だから接収しますというわけにはいきません。接収するためには、手順をふまなければなりません。しかし、所有者不明であれば、手順を踏むことさえもできないという事態になりかねないという状況です。
したがって、所有者不明の土地を国有化しやすくする制度が検討されております。特に、防災面においては、人命に直結しますので、やらざるを得ないことであると思います。
自分が関係する土地が所有者不明の土地にならないように、しっかり対応することをオススメします。所有者不明の土地を国有化しやすくする制度の中には、土地を国に譲る制度も検討されているようです。公表されるまで内容は、わかりませんが、使い勝手が良い制度になることを望みます。
認知症大家対策アドバイザー
岡田文徳
参考:
2019/6/14 1:31日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46077510T10C19A6EE8000/
平成30年度税制改正大綱
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2018/20171222taikou.pdf
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