なかなか時間がかかりそうな場合には・・・
認知症対策ということで家族信託を検討される方は多いと思います。家族信託を行うことで、現在抱えている問題を解決することができるということであれば、実施していただければと考えております。
現在抱えている問題が本人や家族の中で解決できる問題であれば、家族信託を行うことによって、解決できることは多いでしょう。しかし、現在抱えている問題や顕在化していない問題が家族の間で起きているものでなかったとしたら、どうでしょうか?
家族間でも解決するために、時間がかかるわけです。家族間ではなく、他人との間の問題であれば、解決するまでに非常に長い時間がかかってしまうかもしれません。
不動産の場合には、問題が顕在化しているものばかりではありません。特に、自分自身が購入した土地ではなく、相続した土地であれば、なおさらです。何がなんだかわからない状態になっていることもあるでしょう。
さて、土地の境界が定まっているかどうか?
を確認してみてください。
土地の境界確定は、土地の所有者同士が話し合うことが必要です。多くの場合、土地家屋調査士さんが調査及び測量を行い、土地の境界を確定するために、土地の所有者同士に説明し、合意してもらうということになります。合意したら、境界が確定し、境界標を打って、境界を示すことになります。
土地を売却するとき、境界が特定されていないと厄介なことになります。境界が特定されていない土地を購入する人が限られるからです。どうしても、購入者が限られてしまうと、価格も下落する傾向になります。購入する側からすると、境界が確定していないので、境界を確定するために費用がかかります。次に売却することが難しくなるため、境界確定を行う費用以上に値下げの交渉を行うことになるというのが現状です。
つまり、境界が確定していないのであれば、境界を確定しておいたほうが良いと言えます。
さて、所有者が認知症になってしまった場合には、どうなるでしょうか?
言うまでもないかもしれません。境界確定の話し合いを行うことができません。つまり、境界確定ができなくなる可能性が高いということです。
境界が決まらない場合において、筆界特定制度という制度を用いることもできます。次のような流れです。
・筆界特定制度を申請する。
・筆界特定登記官が筆界を明らかにする。
それでも、所有者同士が納得できない場合には、
・筆界確定訴訟により、決まる。
筆界確定訴訟までいくと、約3年かかると言われています。筆界確定訴訟まで行った時に、確定する結果が出る前に、所有者が認知症になってしまったら、どうなるのか?これは、不明です。
話し合いを行うことができなくなるということは、リスクであると言えるでしょう。
・認知症になる前に境界を確定しておく。
・認知症になったとしても、法的根拠がもつ誰かが判断できるようにしておく。
実は、境界が確定していたと思っていても、境界が確定していない場合もあるかもしれません。必ず、見直しましょう。
そして、境界に関しては、自分の家や家族だけの問題ではありません。隣地の人が必ず関わる問題です。そのため、自分たちは、境界を決めたいと考えていたとしても、隣地の人が拒否する場合もあります。自分たちが考えていたスケジュール感で進むとは限りません。境界が決まる前に、こちら側の所有者が認知症になってしまう可能性があります。
一方で、隣地の人が境界を決めたいと言ってきた場合においても、こちら側の所有者が認知症になってしまったために、対応することができないことも考えられます。
どちらの場合においても、両者の不利益になることです。特に、自分の家や家族で決めることができないものですので、早めに対応しておくことをオススメします。
認知症大家対策アドバイザー
岡田文徳
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。
第24回コラム
https://dimetel.jp/2019/10/30/ft24/
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