公証人の視点を知る
家族信託が広まってきていることにより、信託契約書を公正証書により、作成する件数も増えてきています。信託契約書を公正証書にしなければならないわけではありません。公正証書にしても良いというだけであり、公正証書にする必要はありません。
それでは、なぜ、公正証書にするのでしょうか?
きちんと理解しておくことが必要です。
公正証書は、私人からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書と定義されています。なかなか難しいです。
公証人は、公務員ではないけれど、実質的な意義としては公務員として扱われます。一方で、私人は、簡単に言えば、公務員の扱いをされない人と考えて良いかもしれません。
公務員が作成する文書は、公文書として扱われ、私人が作成する文書は、私文書として扱われることになります。
公証人が作成した文書は、公文書として扱われるということになります。
公文書と私文書であれば、公文書のほうが証明力が高いとされています。
例えば、
Aさんが家族信託を行いたいと思い、信託契約書を公正証書にして、締結する場合、簡単な流れを伝えると、
・公証人が信託契約を締結する意思をAさんに確認します
・公証人がBさんを受託者にする意思をAさんに確認します。
・確認が取れれば、信託契約書を公正証書にします。
Aさんの意思を公証人が確認して、公正証書にすることによって、公文書となりますので、公正証書となった信託契約書が正当なものであると証明されるわけです。信託契約書を虚偽であるとして、覆すためには、反論する側が虚偽であることを反証しなければなりません。
信託契約書を公正証書にするためには、Aさんの意思を確認する必要があります。つまり、信託契約書が公正証書になっているということはAさんの意思は確認済みであるということを示しているということになります。
家族間の争いなどに巻き込まれたくない金融機関では、信託口口座を開設するために、公正証書で作成した信託契約書を要求するのは、公正証書が公文書であり、Aさんの意思が確認されていることが明確になっているからです。
公正証書のメリットは、
- 隠匿紛失のリスクがない
- 当事者本人の同一性確認、本人の判断能力および本人の契約意思の確認による無効を主張されるリスクが低い
- 法的検討がされた上で、作成されている
ということです。
公正証書にする必要があるかどうかは、検討する必要があると思いますが、念のため、公正証書にしておくという場合もあると考えられます。
さて信託契約書を公正証書にする場合、公証人は、信託契約書のどのような部分を確認しているのでしょうか?
次に示すところを主に確認しているそうです。
- 信託の目的
- 信託財産の種類に応じた管理
- 一年ルール
- 次順位受益者の指定
目的を明確にすることは非常に重要であると考えます。家族信託することありきで進んでいる場合には、家族信託する目的が明確になっていないことが多いです。家族信託する目的を明確にした上で、信託契約書を作成するべきであると考えます。家族信託する目的を明確にするために、家族で話し合っているうちに家族信託という手法ではない方法を用いたほうが良いという結論に達するかもしれません。家族信託はあくまでも手法にすぎませんので、家族信託が合わない場合には、無理に使う必要はありませんので、ご注意ください。
信託財産の種類に応じた管理、一年ルール、次順位受益者の指定につきましては、家族信託を行うことになった場合に、検討しなければならない項目です。家族信託を行うことになったら、ご相談ください。
認知症大家対策アドバイザー
岡田文徳
参考:
家族信託実務ガイド第15号
法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji30.html
日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/system/s02/s02_03
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。
第27回コラム
https://dimetel.jp/2020/01/22/ft27/
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