さあ、誰に利益を受ける権利をあげようか?
第7回目では、家族信託®を用いた不動産の承継対策について、お話をしました。
特に、遺言と信託契約との大きな違い3つの中でも、
- 遺言は、本人の死後に開示され、有効になるものである。
について、お話をしました。
家族信託®の登場人物は、3人です。
「所有権」を有する人=”財産をお願いする人”=「委託者」
「名義」の人=”任される人”=「受託者」
「受益権」を有する人=”利益を得る人”=「受益者」
第7回目では、”財産をお願いする人”と”任される人”についてお話をさせていただきました。
そこで、信託契約を結ぶことは不動産を承継することの始まりであるということがお分りいただけたと思います。
今回は、③ 遺言は1代限りである。
ついてお話ししていきます。
今回は、”利益を得る人”についてのお話をさせていただきます。
家族信託®を考え、信託契約を結んだ人の多くは、”財産をお願いする人”と”利益を得る人”が同じであるケースでしょう。元々、所有権は、”財産をお願いする人”が持っていたわけですから、”財産をお願いする人”が”利益を得る人”と同じでも、違和感はないと思います。
それでは、”利益を得る人”が亡くなった場合、どうなるのでしょうか?
あるケースを取り上げてみましょう。
(取り上げるケースにおいて、今回はご理解いただくことに主眼をおいて説明していきます。コラムでは触れませんが、その他のリスクと考えられる部分が出てくる場合があります。実際には、専門家にご相談することをオススメいたします。)
<ケース4>利益を得る人を承継させる場合
Mさん:不動産を所有している。
Nさん:Mさんの配偶者。
Oさん:Mさん、Nさんの長男。結婚しているが、子供はいない。
Pさん:Mさん、Nさんの次男。結婚しており、子供がいる。
Qさん:Pさんの子供。
遺言の場合には、第6回のコラムで取り上げましたね、
Mさんの遺言に次のように書かれていた場合、
「Nさんに全ての財産を相続させる。Nさんに相続させた後で、Nさんが亡くなった時は、Oさんに全ての財産を相続させる。」
Nさんに相続させた後で、Nさんが亡くなった時は、Oさんに全ての財産を相続させる。の部分は、無効でしたね。
それでは、家族信託®の場合にはどうなるでしょうか?
”利益を得る人”の順番を決めることができます。
このケースで言えば、
Mさん→Nさん→Oさん→Pさん→Qさん
というように決めることができます。
ただし、注意するべきことがあります。
”任される人”と”利益を得る人”が同じ人になるケースです。信託契約を結ぶ際には、気づいていなかったことかもしれませんが、”利益を得る人”が変わるたびに、最終的に”任される人”と”利益を得る人”が同じ人になるように設定している場合には、注意が必要です。
”任される人”と”利益を得る人”とが同じ人になった場合には、その信託契約は1年しか有効ではなくなるからです。専門家の中で言われている1年ルールというやつです。
1年以内に”任される人”と”利益を得る人”が同じ人にならないように設定し直す必要があります。多くの場合、”任される人”を変更することになるでしょう。
<ケース4>の場合ですと、
”任される人”:Oさん
”利益を得る人”:Mさん→Nさん→Oさん→Pさん→Qさん
と設定した場合には、
Oさんのところで、”任される人”と”利益を得る人”が同じ人になります。”任される人”と”利益を得る人”が同じなったので、1年ルールが適用されますので、1年以内に”任される人”と”利益を得る人”が同じ人にならないように設定し直す必要があります。
”任される人”:Oさん→Pさんor Qさん
などに変更することによって、信託契約を有効にして、家族信託®を続けることができます。
設定によっては、このように思いもよらないところで、信託契約が終了してしまうことがありえますので、設定の際には、十分注意する必要があります。
今回は、信託契約における”利益を得る人”を承継させた場合についてお話をさせていただきました。
次回は、家族信託®を用いた相続財産の分割対策についてお話しさせていただきます。
認知症大家対策アドバイザー
岡田文徳
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。
第7回コラム
https://dimetel.jp/2019/04/12/ft7/
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