”任される人”が借り入れしないパターンがある!
家族信託®において、未だに様々な意見や議論があることは確かです。その中に、任される人(受託者)が借り入れできるかどうかという問題があります。
・借り入れできる説
・借り入れできない説
の両方があります。現在のところ、裁判において争われたことはありませんので、判例はありません。したがって、どちらとも言い難いというのが現状です。
特に、任される人(受託者)が借り入れできるという説をとった場合において、もし任される人(受託者)が借り入れできなかった場合のことも考えておかなければなりません。リスクを理解した上で、任される人(受託者)が借り入れできる説をとるべきであると考えます。
相続税の圧縮対策を行いたいが、任される人(受託者)が借り入れできないという説をとる場合において、何もできなくなってしまうのかというと、様々なことを検討するべきです。あくまでも、“任される人(受託者)が借り入れできない”と言っているだけで、まったく借り入れができないとは言っていないことを理解するべきです。
さて、それでは、相続税の圧縮対策を行うために、借り入れを行いたいと考えた場合には、どのようにすれば良いのでしょうか?
難しく考える必要はありません。むしろ、シンプルです!
家族信託®を行なっていることを前提にしているから、話が難しくなってしまっています。
そもそも、相続税の圧縮対策を行うために、借り入れを行う人は誰か?
ということです。
それは、相続対策をするべき人です。
例えば、
・祖父母
・両親
などになるでしょう。
つまり、上記の人たちが借り入れをすれば、良いということです。
シンプルな例で考えてみましょう!
Aさん:相続対策を行うべき人
Bさん:Aさんの配偶者
Cさん:Aさんの子
Aさんは、元気で健康です。相続対策を行うにあたり、相続税を圧縮したいと考えました。新たに賃貸不動産を購入することを検討しています。
このケースでは、Aさんに問題はありませんので、不動産を購入することで相続税を圧縮することができるのであれば、Aさんが金融機関から借り入れを行うことになります。まったく問題ないと考えられます。
(実際には、賃貸不動産の収益性を考慮するべきです。)
一方で、Aさんは、自分が認知症になった時でも、賃貸不動産の運営、管理が滞らないようにしたいと考えました。そこで、家族信託®を行うことにしました。
お願いする人(委託者):Aさん
任される人(受託者):Cさん
利益を得る人(受益者):Aさん
という設定にしようと考えました。
こちらもまったく問題がないと考えられます。
ここで、任される人(受託者)がCさんになるので、金融機関から借り入れを行う時は、Cさんになるのではという疑問が初めて出てくるわけです。
通常、Aさんが家族信託®を行なっていなければ、Aさんが金融機関から借り入れを行うわけですから、Aさんが金融機関から借り入れを行えば問題ないと考えられます。
任される人(受託者)がCさんになったことによって、金融機関から借り入れを行う時は、誰のために金融機関から借り入れを行うのか?ということが重要です。Aさんのために、金融機関から借り入れを行うのであれば、原則として、Aさんが判断するべきことになります。
家族信託®を行なっていない場合に、Aさんが判断することなく、CさんがAさんのために、金融機関から借り入れを行うことができるかというと、金融機関から借り入れすることはできないはずです。
家族信託®を行なっていることによって、はじめて問題となることなのです。ですから、任される人(受託者)が借り入れできる説と借り入れできない説の両方が存在しているということになります。
また、多くの場合、家族信託®を認知症対策として、使おうと考えていることが任される人(受託者)が借り入れできるのか?できないのか?ということに大きな問題になってしまっていると考えます。安易にスキームに走らずに、原理原則に従って、考えた上で、
“任される人(受託者)が借り入れできる”と考えるのであれば、リスクを考えた上で、行えば良いと考えます。
“任される人(受託者)が借り入れできない” と考えるのであれば、それでも相続税の圧縮対策などを行うことができないかと考えて、行えば良いと考えます。
上記の例で言えば、
お願いする人(委託者)兼利益を受ける人(受益者)であるAさんが借り入れを行い、不動産を購入した後で、不動産を信託財産として、任される人(受託者)であるCさんに運営、管理を行なってもらえば良いということです。Aさんが借り入れしているので、相続税の申告時に債務として、申告することができると考えます。早めの対応が必要であるということがお分かりいただけると思います。
この問題の根本は、任される人(受託者)が借り入れできるのか?できないのか?ということではありません。
認知症対策をギリギリで行おうとしているが故に、対策を検討する時間が無くなってしまっていることです。ゆっくり時間をかけて、認知症対策、相続対策を行なっていれば、任される人(受託者)が借り入れできるのか?できないのか?ということに関係なく、対応することができます。
認知症になってしまってからでは、何もできなくなるわけですから、それまでに対策を検討して、対応しようとするべきことは良いことであると思います。
認知症大家対策アドバイザー
岡田文徳
参考:
大家さんのための家族信託®
家族信託実務ガイド 第13号
第1回から第4回までのコラムはこちら↓
http://www.nichijuken.org/column-okada.html
(注) 家族信託®は、一般社団法人 家族信託普及協会が商標登録しています。
第18回コラム
https://dimetel.jp/2019/07/17/ft18/
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